アンビルコンサルティングのルーツ

* 旧サイトからの転載・加筆

私たちアンビルコンサルティングのメンバーが CAD の販売を始めてから、もうかれこれ 四半世紀になります。今では、アルティウム専門店を営んでおりますが、ここに至るまでには幾多の変遷がありました。

プロテル(Protel/Altium の旧製品)の販売を開始してから数えても、もう 20年以上経過しています。この間いろいろなことにチャレンジしてきましたが、今ふり返るとプロテルの販売を開始した後よりも、それ以前の数年間のビジネスの方が多彩で、変化に富んでいました。

まず写真をご覧下さい。

cad_all

これは1991 年くらいから販売を開始した商品の写真です。そしてここれらは私たちがプロテルを始める前の主力商品でした。これを見て、ピンと来る人はかなりのベテランです。おそらく、こんなものは見た事が無いという人がほとんどでしょう。

ここには、CAD システムを構成するハードウェアとソフトウェアが並んでいます。

この写真の前列には 5.25 インチのフロッピーディスクが見えます。このころの外部記憶媒体としては、まだ 5.25 インチのフロッピーディスクが主流でした。そのてこのフロッピーディスクは、その後の DOS から Windows への移行に合わせて、5.25 インチから 3.5 インチに一気に切り替わりました。そしてmその後、プロテルの販売を始めたころにはすでにメディアは 3.5 インチに切り替わっており、Advanced Scematic や PCB では、最初から 3.5 インチのメディアが使われていたように記憶しています。

また、各製品のフロッピーディスクの前には 4 角いコネクタのようなものが置かれています。これはドングルと呼ばれるプロテクトデバイスであり、これをパラレルポートに差し込まないとプログラムが起動しない、というしくみになっていました。

その他にいろいろなものが写っていますが、後列の左から順のその正体を明らかにしたいと思います。

(1) Qualstar の MT 装置
これは、Gerber データを MT でやり取りするときに必要でした。1250 BPI と 6500 BPI の 2種類がありました。この商品は意外にも需要が大きく、自動車や航空機関連のメーカー様にもご購入いただきました。半永久的なデータの保管にはこれが最適というお話でした。

(2) テクスパート製 T486 パーソナルコンピュータ。
当時英語版 DOS ソフトウェアのプラットフォームとして安心して使用できる PC が入手しにくい状況でした。このため当時のテクスパートでは、使用パーツを厳選して組み立てたオリジナル PC をCAD 用として販売しました。この PC ケースには当時はまだ無名であった Antec 社の製品を選びました。

(3) モニター 
基本的には、モニターの選定はお客様にお任せしていました。写真に写っているのは三洋電機製のものですが、実際には飯山電機製の 21インチ製のものをお選びいただくことが多かったように記憶しています。

続いて前列左から、

(1) Qualster MT 装置のドライバー/ユーティリティ(MT 装置の添付物) 
(2) PADS PCB (16 ビット ソフトウェア。メーカは PADS → Mentor )
(3) MaxRoute オートルータ (メーカは Masstek → OrCAD → CADENCE )
(4) PC Gerber / ECAM (メーカは CSI → ACT → PADS → Mentor )

PADS の記憶 PADS の記憶 – ユーザー編 Massteck の記憶

これらのソフトウェアは今でこそメジャーな存在になっていますが、当時はまだ無名であり、まだこれらのソフトウェアを輸入販売しているところは他にありませんでした。ただし PADS は例外であり、すでの 5 社の代理店があり混戦状態でした。

私たちは、これらの全ての CAD ソフトウェアに対して、英文マニュアルの全文が翻訳された日本語マニュアルを添付しました。当時の私たちは、日本語マニュアルの無い製品を販売するなどということは許されないことだと思い込んでいましたので、労をいとわずマニュアルの翻訳に注力しました。

しかし当時の外国製 CAD ソフトウェアでは日本語マニュアルが皆無に近い状態でしたので、翻訳の依頼や、マニュアルだけを購入したいという引き合いが数多くありました。これを受け、PADS Software 社からの依頼で、その後の PADS2000 マニュアルの翻訳も行いました。 またECAM の日本語マニュアルについては当時の大手 CADメーカ様にもご利用いただきました。

最前列に写っているのは、Omnikey Ultra と Logitech マウスです。当時のキーボードやマウスは、いかにも「コストダウンしました!」と言わんばかりのものが多く、このようなチープなものを避けると選択肢は限られました。Omnikey Ultra はAlps 製メカニカルキースイッチを使っていたのでキータッチが良く、また DIP スイッチでキー配列が変更できるなど多機能でした。また机の上で安定させるために金属のおもりが入れられているなど、他に類を見ない贅沢な仕様の製品でした。

ざっと振り返ってみましたが、この頃の PC-CAD 業界は今よりももっと活気があったように思います。この後 Windows の時代が到来し PC-CAD が本格的に普及しますが、CAD ベンダーの数やツールのバリエーションは、むしろ MS-DOS 全盛のこの頃の方が豊富でした。そして、私たちにとって、このような活気あふれた時期にCAD ビジネスに参入できたことは、大変幸運なことでした。

OrCAD,PADS,P-CAD..the Legend of EDA に回顧録がありますので興味のあるかたはどうぞ。

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