CircuitStudio を試しました

CircuitStudio の正体を突き止めるべく、評価版を試しました。

評価版は CircuitStudio のホームページから、ユーザー登録せずにワンクリックでダウンロードできます。認証にはアカウントの取得が必要ですが、これも最小限の情報をフォームに入力するだけで自動的にアカウントが作成され、すぐにサインインできるようになります。

評価版のアクティべーションが終わった後、まず Altium Designer で作成したプロジェクトを開いてみました。その結果、左パネルのツリーには全てのドキュメントのファイル名が現れましたが、 .PcbDoc は読み込まれていなかったので、 Import コマンドで別途に読み込みました。

以下の画面は、この読み込みが終わった後の画面です。

メニューはリボンスタイルに変更されていますが、パネルやドキュメントのペインは Altium Designer と同じように見えます。ドキュメントの Tie や Split の方法も Altium Designer と同じでした。

以下は簡単な機能確認の結果です。

Altium Designer との互換性について

CircuitStudio の PCB ファイルの拡張子は、Altium Designer と同じ .PcbDoc ではなく  .CSPcbDoc に変更されておりフォーマットが異なります。このため Altium Designer で保存した PCB を CircuitStudio にと見込む事はできず、その逆もできません。しかし CircuitStudio では Altium Designer の PCB5 と PCB6 の .PcbDoc ファイルを Import コマンドで読み込む事ができます。一方、CircuitStudio の .CSPcbDoc を Altium Designer に読み込む手段はありません。

また、プロジェクトファイル(.PrjPCB)と回路図ファイル(.SchDoc)、および 回路図と PCB のライブラリファイルは、Altium Designer と同じフォーマットで保存され、Altium Designer とネイティブレベルで互換性があります。さらに Altium の Vault ライブラリやサプライヤーリンクも利用できます。

こちらのページ を併せてご覧ください。

他社製品や外部ツール との連携について

Import コマンドで多種のフォーマットのファイルを読み込む事ができます。しかし、出力はネイティフォーマットでしか保全できません。ただし PCB の CAM 出力は ODB ++ を含めて、製造に必要なものが一通りサポートされています。また回路図のネットリストは、XSpice と EDIF^PCB フォーマットでしか出力できません。

Import 可能なフォーマット

このよに、バリエーション豊かな入力に対して出力フォーマットには選択肢が無く、他のツールとの連携には不便です。

CircuitStudio の編集機能は Altium Designer と、どれくらい違うのか?

システムプリファレンスを開くと、設定項目が Altium Designer の 3分の 1くらいしかなく、Altium Designer とは比較にならないくらいに機能が絞り込まれています。

そこでまずツールの構成を調べてみると、FPGA 配発環境、伝送線路シミュレーター、ガーバーエディターがまるごと無くなっており、”回路図エディタ” + “A/D 混在シミュレーター” + “PCB エディタ” という構成でした。

そして各ツールの機能についても、ウィザードや表形式の編集機能が軒並み省かれていたり、出力フォーマットの自由度が制限されたりしています。

例えば、回路図エディタでは、

・ EDIF-PCB と XSpice フォーマットのネットリストだけしか出力できない
・ デバイスシート機能が無い
・ 表形式の編集機能(SCH List)が無い
・ 類似オブジェクトの選択機能が無い
・ スマート PDF機能が無い

また PCB については、

・ 面付ができない
・ 極座標グリッドがサポートされていない
・ 類似オブジェクトの選択機能が無い
・ スマート PDF機能が無い
・ 高速回路用のルール設定項目が丸ごと省かれている
・ ネイティブバイナリフォーマットだけでしか保存できない。

これらは、ざっと見渡してすぐに気付いたところをだけを書き出したものです。他にも多くの機能が省かれており、全体的には必要最小限の機能だけでまとめ上げられたシンプルなで使いやすい製品という印象です。しかしシンプルが故に、回路図から出力できる ネットリストの種類が限られ、PCB データがネイティブバイナリでしか出力できない事などの制限があり、データの受け渡しに困る事があるかも知れません。

このように他のツールとの接続性に難があり、会社の設備として現場に浸透している Altium Designer に対して 、この CircuitStudio は個人用の文具のようにも見えます。

SOLIDWORKS PCB と CircuitMaker について

現在 Altium は SircuitStudio と SOLIDWORKS PCB の 2種類の製品を OEM 供給しています。評価版で比較したところ、両者はほぼ同じ物である事がわかりました。しかし詳しく調べてみると編集機能と入出力の仕様に、いくらかの違いがありました。

例えばSOLIDWORKS PCB には SircuitStudio には無い次の機能が付いています。

・SOLIDWORKS 3D-CAD との連携に為の PCB Connecter
・CADENCE Allrgro PCB データのインポート
・ 類似オブジェクトの選択 – インスペクタによる一括変更機能
・Parasolid のエクスポート
・VRML のエクスポート
・Geber X2 の出力
・IPC2581 の出力
・PCB 3D Demo の作成

さらに Altium Designer 17(17.0.8)は SOLIDWORKS PCB の .SwPcbDoc がインポートできる機能を備えています。この為、SOLIDWORKS PCB は Altium Designer との間で PCB データーを双方向にやり取りする事ができます。

また SOLIDWORKS PCB には SircuitStudio にある次の機能がありません。

・ 回路図の EDIF ネットリスト出力
・ Altium Vault コンポーネントのダウンロード
・ Board stack report の出力

さらに SOLIDWORKS PCB ではプログラムの日本語化と、SOLIDWORKS 販売チャンネルでのセールス / テクニカルサポートにより、商品価値が高められています。

そしてもう一つ、Altium は CircuitMaker というPCB CAD ツールを無償で提供しています。この製品の仕様をドキュメントサイトで確認したところ、これも SircuitStudio / SOLIDWORKS PCB と同等の編集機能を備えているようです。しかしこのツールは、デザインファイルを Altium が管理するサーバー上にしか保存されず、それをローカルな環境にダウンロードする事ができません。

このように、SircuitStudio と SOLIDWORKS PCB 及び CircuitMaker の編集機能に違いはなく、データ出力に制限を加えるという方法で差別化とバリューの調整が行われています。

弊社メインサイトの CircuitStudio ページ と Altium の CircuitStudio  FAQ ページ を併せてご覧ください。

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